就活には政府が示す日程のルールがあります。広報活動は3月1日以降、採用選考活動は6月1日以降、正式な内定は10月1日以降です。ただしこのルールと実態は大きく乖離しており、政府自身がその事実を資料で認めています。この記事では、就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議の決定文書(令和7年12月26日)をもとに、ルールの中身と実態、そして例外規定を整理します。
28卒に適用される日程ルール
2027年度卒業・修了予定者、つまり2028年3月に卒業する学生に適用される日程は、従来どおりと決定されています。
| 区分 | 開始時期 | 具体的に何が始まるか |
|---|---|---|
| 広報活動 | 卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降 | 企業説明会、エントリー受付 |
| 採用選考活動 | 卒業・修了年度の6月1日以降 | 面接、選考 |
| 正式な内定日 | 卒業・修了年度の10月1日以降 | 内定通知、内定式 |
このルールは企業の採用活動を法的に拘束するものではありません。決定文書にも「企業の採用活動は、本来企業自身による自由な経済活動の性格を有するものであり、本要請は、企業の採用活動を法的に拘束するものではない」と明記されています。政府が経済団体に要請している位置づけです。
2週間以上のインターンには例外がある
決定文書の脚注に、就活生にとって重要な例外が書かれています。
専門活用型インターンシップ(実施期間は2週間以上)に参加した人材については、採用選考活動開始の例外が従前のとおり認められます。つまり2週間以上のプログラムに参加した学生は、6月1日を待たずに選考へ進む可能性があるということです。
三省合意(2022年6月改正)が定める類型のうち、専門活用型は2週間以上という日数要件を持ちます。日数の意味を理解しておくと、この例外に当てはまるプログラムかどうかを募集要項から判断できます。類型の見分け方はインターン優遇とは?早期選考・選考免除の仕組みを一次資料で解説【28卒】にまとめています。
内定ナビが確認した企業では、ソニーグループ(2〜4週間)、LINEヤフー(2〜6週間)、NTTドコモ(2週間)、日立製作所(2週間)、ダイキン工業(3週間)などが2週間以上のプログラムを持っています。
ルールと実態は乖離している
決定文書には、内閣府の学生アンケートと文部科学省の企業アンケートに基づく実態が記載されています。数字はいずれも同文書からの引用です。
| 調査結果 | 数値 |
|---|---|
| インターンシップ等に参加した学生 | 約7割。参加は卒業・修了前年度の7月から本格化 |
| 参加者のうち「早期選考の案内」を受けた割合 | 約7割 |
| その後の採用説明会・セミナーに参加した割合 | 約6割 |
| その後の採用試験や面接等を受けた割合 | 約5割 |
| 4月までに採用面接を受けた学生(累計) | 約9割 |
| 4月までに内々定を得た学生(累計) | 約7割 |
| 6月までに内々定を受けた学生(累計) | 約9割 |
| 広報活動を2月以前に開始した企業 | 約6割 |
| 採用選考活動を5月以前に開始した企業 | 約7割 |
| 5月以前に内々定を出した企業 | 約6割 |
6月1日の選考解禁を待っていると、その時点で約9割の学生が内々定を持っている計算になります。ルールを額面どおりに受け取ってスケジュールを組むと、実態から取り残されます。
エントリーシートの提出時期も前倒しになっている
同文書によれば、エントリーシートを最初に提出した時期は卒業・修了前年度の9月以前が約4割で、広報活動開始の3月(約1割)を上回っています。企業説明会やセミナーへの参加も、9月以前が約7割、3月が約1割です。
就活は長期化している
就職・採用活動に9か月間程度以上を要している学生の割合は、令和2年度の約3割から令和6年度には約5割へ増加しています。早期化すれば長期化は避けられない、と文書は指摘しています。
就活が終わったと感じるのは、内定式ではなく内々定のとき
学生アンケートで就職・採用活動が終わったと考えるタイミングを聞くと、「内々定をもらった企業の中から就職先を決定したとき」と「志望度の高い企業から内々定をもらった時」を合わせて約6割でした。ルール上10月1日以降とされる「内定式に出た時・正式な内定通知を受けた時」は約1割弱です。複数の内々定を持ったまま正式な内定や内定式まで活動を続けることが長期化につながっている、と文書は分析しています。内定式を複数回受ける例や、内定式に出たあと入社前に辞退する例も挙げられています。
企業の側では、採用予定数の充足率が近年下がり、直近の2025年卒では3割台です。理由として「選考応募者が予定より少ない」「内定辞退が予定より多かった」などが示されています。一部の企業が早く始めることで、ルールを守る企業が応募者や内定者を確保できないという不公平感が生じているとも書かれています。
授業への影響も数字に出ています。文部科学省の大学等アンケートでは、約9割の大学等で学生が就職活動のために授業等を欠席しています。採用面接等と授業・ゼミ・研究活動の時期が重なることについて、学生からの相談は増加傾向にあります。
プレエントリーという仕組み
就職情報サイトでは、日程ルールを踏まえてエントリーが3月以降に設定されている一方、それ以前は「プレエントリー」や「インターンシップエントリー」という別の枠組みで情報提供が行われています。
決定文書は、この二分化が「採用選考に直結するインターンシップ等の早期開始の端緒として広報・採用活動の早期化や二分化の一要因となっており、企業や学生の双方にとって負担増や分かりにくさにつながっている」と指摘しています。
オワハラ防止も要請されている
決定文書は、日程ルールの遵守とあわせて「オワハラ」等の防止に向けた取組みを関係者に要請しています。脚注では、都道府県労働局・ハローワークが学生からの相談を受け付け、事実確認のうえ適切に対処すること、大学のキャリアセンター等と事例の共有等の連携を行うことが明記されています。
内定と引き換えに他社の選考を辞退するよう迫られた場合、相談先は大学のキャリアセンターだけではありません。都道府県労働局とハローワークが窓口として明記されています。学生が一人で抱える必要はない仕組みになっています。
29卒以降は見直しが検討されている
決定文書は、2028年度(2029年3月)以降の卒業・修了予定者については、アンケート結果や実態を踏まえ、経済界や大学側と議論を行って見直しの検討を進めるとしています。
大学側からは「採用選考活動は学期期間中には行わず、卒業・修了前年度の春休み以降の長期休業期間に行われるべき」という考え方が示されています。経済界からは、新卒採用枠の充足率が下がっていること、中小企業では10月1日時点で必要な内定者数を確保できていないことが指摘されています。
2026年度の幹事会で出ている論点
連絡会議の下には、内閣官房・文部科学省・厚生労働省・経済産業省で構成する幹事会があります。就職問題懇談会の座長、経団連、日本商工会議所も関係者として出席しています。2026年4月27日(令和8年度第1回)と5月27日(第2回)の会合では、今後の就職・採用活動の日程や在り方が議題になりました。議事要旨では発言者は特定されていないため、以下は意見の内容だけを整理したものです。
| 論点 | 出てきた意見 |
|---|---|
| 何のために日程を決めるか | 卒業の前年度の終わりまでは学修や課外活動、留学に専念し、採用選考では大学での活動全体を評価してほしいとの意見が出ています。日程が中心の現行の要請について、理念や目的をまず共有し、企業にも利益になるものにしたいという意見もあります(4月) |
| 早期化の背景 | 要請の仕組みを始めた当時より採用選考は多様になり、企業はできるだけ早く必要な人材を確保したいと考えている、との意見が出ています(4月) |
| 要請という形式 | ルールと呼ぶ以上、守らないのはおかしく、ルールの要請ではない形を検討してもよいとの意見が出ています。開始時期だけを見直しても形骸化が心配なので、目的や理念を掲げて具体的な時期を公表するガイドラインや指針の形式も考えられないか、という案もあります(4月)。毎年政府が企業に要請する手法は、学生や企業の予見可能性の点から見直したほうがよいとの意見も出ています(5月) |
| 開始時期の示し方 | 見直すなら開始時期だけでなく、なぜその時期が適当なのか理由を示すのがよいとの意見が出ています。法律違反ではないので無理に守らせるものではないが、守ってもらえる可能性が高まる見直しができればよい、という意見もあります(4月) |
| 中小企業への配慮 | 中小企業は大手の採用動向を見ながら活動せざるを得ないため、ルールを変えるなら中小企業も含めて納得感のある説明が必要との意見が出ています(4月) |
| 活動のスタートの定義 | エントリー、登録、事前スクリーニングなど、何をもって就職・採用活動の始まりとするかを議論したほうがよいとの意見が出ています。日時が指定される選考は学事日程とぶつかりうる一方、エントリーシートの作成は学生が自分の裁量で進められます。現在の3月1日は就職情報会社等が企業に学生情報を提供するタイミングにもなっており、別の期限をどこまで設けるかも含めて議論すべきだという意見です(5月) |
| 大学が行うキャリア支援 | 学生のキャリア形成支援の取組は企業が大学等と連携して行うのが望ましく、大学や専門高等教育機関が主体となって行うものは実施時期を限定しなくてもよいのでは、との意見が出ています(5月) |
| 見直し後のフォローアップ | ルールを見直しても連絡会議等で引き続きフォローアップが必要で、その方法を関係者間で調整すべきとの意見が出ています(5月) |
表の内容は議論の途中で出た意見で、決定事項ではありません。2026年10月時点で、2028年度(2029年3月)以降の卒業・修了予定者に適用される新しい日程は決まっていません。確認できた最新の議事要旨は5月27日分です。
28卒には現行の日程が適用されると決定済みです。29卒以降については、政府がルールを要請する形そのものをやめる案も議事要旨に出ていますが、方向性はまだ固まっていません。28卒が現行の仕組みで就活する最後の学年になるかどうかは、今後の決定を待つ必要があります。
逆算したスケジュールの目安
| 時期 | 実態としての動き |
|---|---|
| 大学3年 4〜6月 | 夏インターンの応募締切が集中する。メーカーは6月締切が多い |
| 7〜9月 | インターンの参加が本格化。約7割の学生が参加する |
| 9月以前 | 約4割の学生が最初のエントリーシートを提出している |
| 10〜2月 | 秋冬インターン、早期選考の案内が届き始める |
| 2〜4月 | 採用面接と内々定が増加。4月までに約7割が内々定を得る |
| 3月1日 | ルール上の広報活動開始 |
| 6月1日 | ルール上の採用選考活動開始。この時点で約9割が内々定を持つ |
| 10月1日 | ルール上の正式な内定日 |
準備の進め方はES対策・体験談サイト比較とWebテスト・適性検査対策の進め方にまとめています。企業ごとの募集要項はインターン優遇とは?早期選考・選考免除の仕組みを一次資料で解説【28卒】の業種別一覧から確認できます。
インターンシップに参加した後、企業からの連絡がいつ来るのか、来なかった場合にどう合流するかは、インターンが終わった後にすること|約7割が受け取る早期選考の案内と、記録の残し方【28卒】で扱っています。学生情報が使える時期の制約が、連絡の有無に関係しています。
夏の募集に間に合わなかった場合は、夏のインターンに参加できなかったらどうするか|9月以降に応募できる17社と、3月までの動き方【28卒】もご覧ください。締切が10月以降のプログラムを一覧にしています。
就職活動の進め方に迷っている場合は、就職活動を続けるか迷ったときに確認できること|公的な相談窓口と、制度上の選択肢【28卒】もご覧ください。新卒応援ハローワークでは臨床心理士等への相談もできると案内されています。
3月から10月までの動き方を月ごとに整理したものは広報解禁後の動き方|3月から10月の内定日まで、正規ルートで進める就活【28卒】にまとめています。
よくある質問
6月まで選考は行われないのですか
実態としては行われています。決定文書によれば、採用選考活動を5月以前に開始した企業は約7割です。日程ルールは法的拘束力を持たない要請です。
2週間以上のインターンに参加すると何が変わりますか
専門活用型インターンシップ(2週間以上)に参加した人材については、採用選考活動開始の例外が認められます。6月1日を待たずに選考へ進む可能性があります。
内々定と正式な内定は違うのですか
正式な内定日は10月1日以降とされており、それ以前に伝えられるものは内々定と呼ばれます。決定文書でも両者は区別されています。
オワハラを受けたらどこに相談すればよいですか
都道府県労働局とハローワークが相談を受け付けると明記されています。大学のキャリアセンターとも連携して対応する仕組みです。
28卒と29卒でルールは変わりますか
2028年度(2029年3月)以降の卒業・修了予定者については見直しの検討を進めるとされています。28卒は現行ルールが維持されます。
29卒以降のルールはもう決まっていますか
まだ決まっていません。2026年4月と5月に開かれた連絡会議の幹事会で、日程の在り方や要請という形式を含めて議論されている段階です。最終的な決定は毎年度の連絡会議を経て、内閣官房のページで公表されます。
いつから動き始めればよいですか
インターンへの参加は卒業・修了前年度の7月から本格化し、9月以前に約4割がエントリーシートを提出しています。大学3年の春には準備を始めておく必要があります。
このルールを守らない企業は問題があるのですか
法的拘束力はないため、違反という扱いにはなりません。ただしオワハラなど学生の権利を侵害する行為は別で、相談窓口が用意されています。
就活はどのくらいの期間かかりますか
9か月程度以上を要している学生が令和6年度で約5割です。令和2年度の約3割から増えています。
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選考を有利に進めたい人へ
6月1日の選考解禁を待つ間に、約9割の学生が内々定を持っているという数字が出ています。解禁前から動くなら、就活エージェントや逆求人・スカウトサービスで早い時期の選択肢を探しておくのもひとつです。
内定と内々定では法的な扱いが違います。辞退や取消しの考え方は内定と内々定は何が違うか|厚労省の説明で見る労働契約と辞退の扱い【28卒】にまとめています。
在学中に決まらなかった場合の選択肢については、既卒・第二新卒の就活で、卒業後3年間は新卒枠に応募できるよう求めた厚生労働省の指針と、実際の受け入れ状況を扱っています。
このルールは企業の採用活動を法的に拘束するものではありません。政府自身がルールと実態の乖離を資料で認めているため、企業ごとの実際のスケジュールは個別に確認してください。
まとめ
- 28卒の日程ルールは広報3月1日、選考6月1日、内定10月1日で従来どおり
- このルールは要請であり、企業を法的に拘束するものではない
- 2週間以上の専門活用型インターン参加者には選考開始の例外が認められる
- 実態は乖離しており、6月1日時点で約9割の学生が内々定を持っている
- オワハラの相談先として都道府県労働局とハローワークが明記されている
- 29卒以降は見直しの検討が進められており、2026年の幹事会で議論中(未決定)
参照した情報源
- 就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議「2027年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」(令和7年12月26日決定、2026年10月確認)
- 就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議幹事会 議事要旨(令和8年度第1回 2026年4月27日、第2回 2026年5月27日、内閣官房)
- 文部科学省・厚生労働省・経済産業省「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」(2022年6月改正)
本文中の数値は、上記決定文書に記載された内閣府の学生アンケートおよび文部科学省の企業アンケートの結果です。
就職・採用活動日程のルールは毎年度、関係省庁連絡会議で検討されます。2028年度以降の卒業・修了予定者については見直しの検討が進められています。最新の決定は内閣官房のページでご確認ください。